技術の世界に“完成”はありません。
毎日車を触り、研磨を重ね、艶をつくり続けても、
「これで完璧だ」と思った瞬間に、腕は止まる。
だから僕は、学び続ける。
それも、机の上ではなく“現場”で。
そしてその現場がどれだけ遠くても、必要とあらば足を運ぶ。
10月某日。
その想いを胸に、千葉県のまなっちガレージさんを訪ねました。
■ 同じ仕事をしていても、“見ている方向”が違う
千葉までの道のりは決して近くない。
朝早く出て、夕方に到着。
到着した瞬間、まなっちガレージさんの店内からは
コンプレッサーの音とポリッシャーの回転音が響いていました。
「お疲れさまです!」
ドアを開けると、まなっちさんとスタッフさんが笑顔で迎えてくれた。
あの瞬間の温度感は、忘れられません。
同じ“洗車・コーティング”という仕事をしているけれど、
見ている方向や、お客様への届け方が違う。
それがとても面白く、そして刺激的でした。
一つひとつの動作に意味があり、
「このやり方はなぜそうするのか?」を丁寧に共有してくれる。
技術の共有はもちろんですが、
そこに流れている“空気”そのものが学びだったのです。
(📸写真①:まなっちさん・スタッフさん・僕の集合写真)

■ 技術よりも先に“人”がある
どんなに高価な機材を揃えても、
最終的に“磨く”のは人の手。
その手を動かすのは心だと思っています。
まなっちガレージさんのスタッフの皆さんと話して感じたのは、
**「この店は人を大切にしている」**ということでした。
作業の合間の会話、確認の声掛け、
お客様に対する一言の重さ。
そのすべてに“誠実さ”が宿っていました。
「仕事を楽しく続けられる環境を作る」
まなっちさんがそう話していたのを、今でも覚えています。
それは簡単なようで、実はとても難しいこと。
技術よりも人、利益よりも信頼。
この考え方は、僕自身がずっと大切にしているものでもあります。
(📸写真②:作業風景)

■ 他県まで行く勇気──それでも行く理由
正直なところ、
他県の同業店舗に“学びに行く”というのは勇気が要ります。
時には、周囲から「なぜそこまで?」と言われることもあります。
でも、僕はこう思うんです。
お客様のためになるなら、距離なんて関係ない。
そして、恥をかくことも怖くない。
この仕事は、プライドと誇りの紙一重。
「教わる側」に回るということは、自分の未熟さを認めることでもあります。
でもその一歩を踏み出さなければ、見えない景色がある。
今回も、まなっちさんの現場で
「なるほど、こういう考え方もあるのか」と気づかされる瞬間が何度もありました。
僕が十日町で積み上げてきた技術とは違うアプローチ。
それを目の前で見られたことが、何よりの財産です。

■ 「うちはうち、よそはよそ」では終わらせない
日本全国に、洗車やコーティングを行うお店は数え切れないほどあります。
けれど、その中で“交流できるお店”はほんの一握り。
「うちはうち」「よそはよそ」で終わらせてしまえば、
技術は広がらないし、業界全体も成長しない。
僕は昔から、“競う”よりも“高め合う”方が好きです。
まなっちさんも同じ考えを持っていました。
「違う場所で頑張っているからこそ、話せることがある」
──この一言に、すべてが詰まっていたと思います。
(📸写真③:店内設備の写真)

■ 現場でしか得られない「納得」
技術書や動画で学べることも多い。
でも、“感覚”だけは現場でしか掴めません。
作業のテンポ、ポリッシャーの動き、拭き上げの呼吸。
それらを間近で見ると、
同じ道具を使っていても「伝わるもの」が全く違うのです。
「ここ、こういう光の当て方するんですね」
「その圧の抜き方、真似したいです」
そんなやり取りを重ねながら、
気づけば一日があっという間に過ぎていました。
それは“教えられる時間”というより、
“共に磨き合う時間”。
お互いの情熱が、まるで研磨機の熱のように静かに伝わっていく感覚でした。

■ お客様に還元できる学びとは
僕が他県まで足を運ぶ理由は、
「自分のため」ではなく「お客様のため」です。
お客様は、店舗の裏側を知りません。
でも、手の動き一つ、力加減一つで、
艶の“質”が変わることは確かです。
そしてその差は、いずれ“信頼”という形で返ってくる。
今回学んだことも、
すぐに仕事へ取り入れました。
薬剤の選定、作業手順、照明の位置。
ほんの少しの違いでも、結果が大きく変わる。
「勉強している人の車は違う」
そう感じてもらえるように、これからも全国の現場を見て歩きたい。
それが、僕の“お客様への約束”です。

■ 終わりに──誇りと謙虚さの両立
まなっちガレージさんを訪問して、
改めて感じたのは“誇りと謙虚さは共存できる”ということ。
自分の技術に誇りを持つことは大切。
でも、それを磨くために他者に学ぶことを恐れない。
そのバランスが、職人として最も大事だと実感しました。
まなっちさん、そしてスタッフの皆さん。
本当にありがとうございました。
現場で交わした何気ない言葉や笑い声が、
きっとこれからの僕の仕事の中で、何度も思い出されるはずです。
千葉の現場から学んだ“真っすぐな情熱”を胸に、
また十日町で一台一台の車と向き合っていきます。
技術は旅をする。
そして、想いは距離を越える。
