カーコーティングという仕事は、
“塗る”ことではなく、“信頼を積み重ねること”だと思っています。
今回ご紹介するのは、
トヨタ・カローラスポーツ(グレー) のお客様。
昨年、当店でダイヤモンドキーパーを施工させていただいたお車です。
それから1年。
とても丁寧に乗られており、メンテナンスも完璧。
まさに「理想的なオーナー様」でした。
しかし、ある日突然の自然災害。
雹(ひょう)被害によって、ボンネットやルーフに無数の小さな凹みができてしまったのです。
(📸写真①)

■ 保険修理、そして“他店での再施工”
雹被害の修理は、板金塗装工場で行われました。
修理自体は保険対応。
そして、その流れの中で自動的に“コーティング再施工”が組み込まれていたそうです。
お客様は「修理と一緒にコーティングも直してもらえる」と安心されていました。
しかし問題はその“施工店の選定”でした。
修理工場が勝手に提携店を選び、
当店ではなく他店に再施工を依頼してしまったのです。
お客様はそれを知らぬまま納車を受け取り、
「きれいになった」と思いながらも、どこか違和感を覚えたそうです。
■ “なんか違う”という感覚
しばらく乗ってみると、
洗車をしても水弾きのムラが目立つ。
光を当てると、ボディに筋のような拭き残しが見える。
「なんか、去年の仕上がりと違う気がする」
そう感じたお客様が、
わざわざ当店に連絡をくださいました。
正直、その一言が胸に刺さりました。
私たちの名前を信じてくださっていた方が、
“違和感”を覚えるような仕上がりを受け取ってしまったこと。
それが何より悔しかったのです。
(📸写真②:)

■ 現車確認──“残念”という言葉しか出ない
お車を確認させていただくと、
光沢こそ一見きれいに見えるものの、
細部を見れば見るほど違和感の正体が明らかになりました。
ドアノブまわり、ミラーの付け根、
リアゲート下、ボンネット縁、
ホイール周辺、モールの際。
拭き残しが10カ所以上。
しかもその多くが「初心者でも気づくレベル」の箇所でした。
一瞬、言葉を失いました。
“キーパー技術認定店”と名乗る以上、
どんなに忙しくても絶対に外してはいけない部分です。
もちろん他店を批判するためにこの文章を書いているわけではありません。
ただ、このレベルの施工が「同じキーパー施工」として扱われてしまう現実を、
私は見過ごすことができませんでした。
▼拭き残し箇所は10カ所以上。




■ 無償で部分再施工──それは「同じ看板」を背負う者の責任
お客様は申し訳なさそうに、
「お金を払ってでも直したい」とおっしゃいました。
けれど、そんなことは言わせられません。
私たちの名前を信じてくださったお客様に、
“他店のミス”で悲しい思いをさせてしまった。
ならば、その責任は同じ看板を掲げる私たちが取るべきです。
作業内容は、部分研磨・再脱脂・再コーティング。
再施工範囲は限られていましたが、
細部までしっかりリセットを行い、
「これが本来のダイヤモンドキーパーです」とお伝えできる状態に戻しました。
施工後、お客様が車を見た瞬間、
「ああ、これだ。この艶です」と笑ってくださいました。
その笑顔を見て、胸のつかえがようやく取れました。
(📸写真③・④:部分再施工中/仕上げ後の艶感比較)

■ 同じ「技術認定店」としての誇りを問う
この仕事は、看板を掲げればそれで終わりではありません。
技術・道具・空間・姿勢、すべてが“信用”でできている。
キーパーというブランドは全国に広がり、
それぞれの店舗が地域で活躍しています。
だからこそ、ひとつの施工のミスが“全国の信頼”に影響する。
お客様は“どこの店”であっても「キーパーなら安心」と思ってくださる。
その信頼を守るのは、一人ひとりの施工者の意識です。
“仕上げの甘さ”は、道具ではなく心の緩み。
“拭き残し”は、時間のせいではなく責任感の欠如。
同じ看板を掲げているからこそ、
私はあえてこの言葉を残します。
「施工技術」は資格ではなく、“誠意の精度”で決まる。
■ お客様を悲しませないために
今回の件で改めて痛感しました。
お客様が本当に信じているのは「ブランド」ではなく「人」だということ。
「キーパーだから」ではなく、
「佐藤さんに任せたい」と思ってくださることが、
私たちにとって最大の誇りです。
同じ看板を掲げていても、
想いが違えば結果も違う。
そしてその“違い”を感じ取るのは、
いつもお客様の方です。
お客様は、プロよりもずっと敏感です。
艶の違い、手触りの違い、
車を受け取った瞬間の“空気”の違い。
それを「なんか違う」と感じたお客様の感覚こそ、
本物を見抜く“信頼の目”です。
だからこそ、私たちはその信頼を裏切ってはいけない。
(📸写真⑤:完成後の全景ショット)

■ 悲観ではなく、改善のために
この記事は、誰かを責めたいわけではありません。
ただ一人でも多くの施工者に、
「お客様を悲しませない技術」を意識してほしい。
私たちは皆、“車をきれいにする”という一点で繋がっています。
その想いがあるなら、
拭き残しのない仕上げに全力を注ぐべきです。
もう一度言います。
お客様は、コーティングの理論を知らなくても“結果”を見ています。
その“結果”が笑顔で終わるか、ため息で終わるか。
それを決めるのは、施工する私たちです。
全国の施工者に伝えたい。
「時間がない」「納期が厳しい」そんな言い訳よりも、
目の前の一台を本気で仕上げる覚悟を。
それが“プロフェッショナル”という言葉の意味だと思います。
■ 終わりに──同じ看板を掲げる仲間として
お客様の悲しみを、自分の悔しさに変える。
その気持ちで、私はこの文章を書いています。
今回の件で、改めて思いました。
どんなに忙しくても、
「ここまででいい」は絶対に言いたくない。
私たちは、全国の施工者とともに“キーパー”という技術を守る仲間です。
だからこそ、ここで終わらせてはいけない。
お客様を悲しませないために、もう一度原点に立ち返る。
それが本当の意味での「ブランドの力」だと思います。
悲観ではなく、改善のために。
この仕事を誇りに思うすべての人に、
どうかこの想いが届きますように。
(📸写真⑥:最終仕上がり・艶のリフレクション)

