■ 全国を飛び回ってでも“学ぶ理由”
一見すると、私たちの仕事は「もう完成している」と思われがちです。
コーティング技術も、研磨のノウハウも、ある程度やり込めば形になります。
けれど、“完成”という言葉ほど危険なものはありません。
車の塗装は生き物のように、年式や状態、補修歴によって反応がまったく違う。
使うパッドやコンパウンドの組み合わせが同じでも、
力のかけ方一つで艶も光の立ち上がり方もまるで変わる。
今回の講習では、まさにそこを突き詰めました。
「線傷をどう抑え、どの段階で陥没を拾いにいくか」──
ミクロン単位の研磨を、力加減と角度だけで制御していく。
理論ではなく、**“感覚と結果が一致する瞬間”**を探し続ける8時間。
まさに、職人の真骨頂でした。

■ “段階の力加減”が生む艶の質
finalstandの講師の方から教わった中で、特に印象に残ったのが
「段階ごとに力を抜く」という概念。
これまでももちろん意識していたつもりでしたが、
一枚のパネルの中で、**“どこまで押し、どこから離すか”**を
ここまで明確に言語化されたのは初めてでした。
力を抜くタイミングが1秒早いだけで、光の反射が変わる。
逆に押し込みすぎれば、塗装の“山”がつぶれ、艶が鈍る。
その見極めを体で覚えるための反復練習。
気づけば昼食を取るのも忘れ、
無言でポリッシャーの音だけが響く空間になっていました。
■ “学び続ける”という選択
お客様からすれば「どこで習ったか」は関係ありません。
重要なのは「結果がどうか」だけです。
だからこそ、私たちは結果の質を上げるために学びに行く。
それが、価格を上げるための口実ではなく、
“今の価格でより良い結果を出すため”の努力であることを大切にしています。
「講習を受けたから値上げ」ではなく、
「講習を受けたからこそ、同じ価格でさらに喜ばれる仕上がりを」
──それが、私たちの誇りです。
知識を増やすことも、資格を取ることも大事ですが、
現場の“手”を鍛える努力を怠っては意味がない。
一台一台の塗装を前に、
「この一瞬の力の抜き方で、お客様の表情が変わるかもしれない」
──そんな想いで機械を握っています。

■ 全国の職人に、心からの敬意を
講習には全国から志の高い職人が集まっていました。
「まだ上がある」と信じる人だけが持つ、
静かな熱が満ちた空気。
競い合うわけではなく、
「どうすればもっと良くなるか」を素直に語り合える時間。
同じ“磨き”という言葉でも、目指す方向が違えば手も違う。
けれど、根っこにある想いは一つ──
「お客様に“本当にきれいになった”と感じてもらいたい」。
その一点でした。
■ 姨捨SAで見た夜景と、心の静けさ
帰り道、長野の 姨捨(おばすて)サービスエリア に立ち寄りました。
時刻は23時。
眼下に広がる夜景は、まるで研磨後の塗装のように静かに光を放っていました。
一日中、力加減と光沢の関係を追いかけ続けた後に見る夜景は、
どこか、心に沁みるものがありました。
「まだまだ、磨ける。」
そう小さく呟いて、車に戻りました。

■ 終わりに
「努力」と言うと、どこか格好つけた言葉に聞こえます。
でも実際の現場は、手も腰も痛く、目も疲れる。
それでも機械を握るのは、“好き”だから。
そして、“まだうまくなれる”と信じているからです。
今回学んだことを、十日町の店舗に持ち帰り、
一台一台に還元していきます。
お客様が「え、ここまできれいになるの?」と驚くような仕上がりを、
これからも追い求めていきます。
岐阜まで学びに行く理由は、
誰かに勝ちたいからではなく、
昨日の自分に勝ちたいから。
これからも、技術の研鑽に終わりはありません。
