高級ミニバンの代名詞「ヴェルファイア」。
その存在感は、走っているだけで空気を変える。
白いボディに映えるメッキパーツ。
“美しさ”と“カッコよさ”が同居する一台です。
しかしこの「美」と「威厳」を維持するのは、
想像以上に難しい。
今回は、ヴェルファイア(ホワイト)にダイヤモンドキーパーを施工した記録とともに、
“本当の意味でのリセット”についてお話しします。

■ メッキが多いという宿命
アルファードとヴェルファイア。
兄弟車と呼ばれるこの二台。
見た目は似ていますが、細部に注目するとまったく違う個性を持っています。
とくにヴェルファイアは、フロントマスクを中心にメッキパーツが多い。
メッキは高級感を演出する一方で、
汚れ・水垢・酸化の影響を非常に受けやすい素材です。
雨ジミ、ウォータースポット、白く曇るくすみ…。
その多くが「普通の洗車では取れない」領域にまで入り込んでいます。
そして実際、
このメッキの汚れを“磨ける”店舗は全国的にも少ないのが現状です。
理由は簡単。
メッキは塗装よりもはるかに繊細で、研磨を誤ると一瞬で曇るから。
だからこそ、
多くの店舗では“触れない”という判断を下します。
けれど、それでは本当の意味で車全体を整えることはできない。
■ “磨かない”という選択肢を持たない
当店では、メッキパーツも含めて全体を一度リセットします。
リセットとは、単に汚れを落とすことではありません。
「素材に合わせて、ダメージを取り除き、素地を生き返らせる」こと。
メッキ部分には専用の極細コンパウンドと特殊クロスを使用。
塗装面と異なる角度と圧を加え、
ミクロン単位で酸化膜を除去します。
この作業を怠ると、どんな高級コーティングをしても輝きが鈍くなります。
逆に、正しくリセットすれば――
写真①のように、メッキの縁まで光が通る。
この“通る光”こそが、
ヴェルファイアをヴェルファイアたらしめる表情なのです。

■ ホワイト塗装というもう一つの壁
一見、汚れが目立たないと思われがちな白。
しかし実際は、最も誤魔化しがきかない色です。
塗装面の肌の粗さ、うっすらとした水ジミ、
そして鉄粉の影響までもが“艶の質”として表れます。
ダイヤモンドキーパーのガラス被膜は、
透明度が非常に高く、下地の状態をそのまま映し出します。
だからこそ、リセットの精度=仕上がりの美しさになるのです。
今回は、
洗浄→鉄粉除去→塗装面チェック→軽研磨→脱脂→コーティング
という流れをすべて屋内ブースで行いました。
外気温・湿度をコントロールしながら、
塗装と溶剤の反応を一定に保つことで、
ムラのない均一な艶を実現します。
写真②〜④では、
ボンネット・サイド・リアにかけて均一に光が回る様子が確認できます。
白いボディでここまでの立体感を出せるのは、
下地の処理が“完全に整っている”証拠です。

■ 「ダイヤモンドキーパー=ツヤ」ではない
多くの人が“ダイヤモンドキーパー=ツヤ”というイメージを持っています。
確かに、深い艶はこのコーティングの最大の特徴です。
しかし、本当に重要なのは「ツヤの奥にある透明感」。
表面をテカらせるだけなら、
市販のワックスでも可能です。
でも、**“素地から光を放つ艶”**は、
リセットされた塗装にしか生まれません。
今回のヴェルファイアも、
施工後にブースの光がまるで吸い込まれるように映り込みました。
“鏡のように映す”ではなく、“内側から光る”。
これが、私たちが求める「美しさの中のカッコよさ」です。
■ 見えない部分で差が出る
ダイヤモンドキーパーの持つガラス被膜は非常に硬く、
メッキの保護にも効果を発揮します。
ただし、正しく施工できなければ、
硬い皮膜が“下のダメージを閉じ込める”だけになります。
当店が重視しているのは、
“塗る前に整える”という工程の深さ。
見えない部分をどこまで丁寧に扱えるかが、
仕上がりの説得力を左右します。
塗る時間よりも、整える時間の方が長い。
それでも妥協しないのは、
「本当の意味で“守れる艶”をつくりたいから」です。

■ リセットできる店、という価値
メッキも、塗装も、下地も――
“リセット”できる店は、実は多くありません。
手間も知識も必要で、利益効率だけを考えれば避けたくなる工程。
けれど、その一手間が「格の違い」になる。
見える部分だけでなく、
見えない場所まで手を伸ばす。
そこに宿る“誠実さ”が、結果として艶に変わる。
私たちはそう信じています。

■ 終わりに──艶の奥にある「意志」
コーティングとは、ただの美容ではありません。
車を守り、そしてオーナーの想いを可視化する仕事です。
ヴェルファイアのように、
力強く、それでいて繊細なデザインを持つ車こそ、
本当の技術が試される。
輝きだけではなく、存在そのものに品格を宿す。
それが、ダイヤモンドキーパーの真価です。
写真⑤のように、
仕上がった車体を見送る瞬間は、何度経験しても胸が熱くなります。
“きれい”という言葉の中には、
数えきれない工程と判断が詰まっている。
そしてそれをお客様が信じて預けてくださるからこそ、
私たちは磨き続けることができるのです。
今日もまた、一台の車が新たな輝きを手にしました。
その艶の奥にあるものは、
技術と、誠実と、意志。
